※イソギンチャクの基本的な飼育方法は、サンゴ飼育ガイドのソフトコーラルに準じますので割愛させていただき、ここではイソギンチャク特有の性質と飼育方法、
情報のみをご紹介します。また、イソギン各種の紹介・飼育方法
は、無脊椎動物各種飼育図鑑に随時掲載をしていっておりますのでご覧いただけますと幸いです。
●重要なイソギンチャクの薬物採種状況 2019/1/30 改定
イソギンチャクを飼育するに当たって最重要となるのは、もともとの状態と、採取地でどのような採取方法をとられていたかということです。
マニラ、インドネシアなどで、シアン化化合物、もしくは濃塩で採取されたイソギンチャクは輸入後2週間程度で死亡してしまうものが非常に多く、ハタゴイソギンチャク、イボハタ
ゴ、センジュイソギンチャクの多くは90%近いものが死亡する傾向にありました。
当店が最後に上記のイソギンチャク類を入荷・確認したのは、2008年頃までですが、上記の産地でのハタゴイソギンチャクはついに一個体も販売はできませんでした。
ベトナム産は当初、状態が良いものが多かったですが、時期や年にもよりました。
他の種では大雑把な割合になりますが、当店では入荷時してから約2週間程度でシライト、LTは約1〜3割程度の死亡が見られます。LTのほうがすこしましでシライトの死
亡の方が目立ちます。大丈夫であるといえる種はタマイタダキ、サンゴイソギンチャクですが、これらも稀に薬物採取されているらしく、しばしば途中から不調になるものもおり
ます。
正常なイソギンチャクがなんらかの理由で死亡した際は、徐々に小さく縮まって元気が無くなり、死亡していることが最後までわからないほど小さくなり、見た目上水もあまり
濁りさえしないことも多いのですが、薬物採取されたものは、最初は健康な個体と全く変らない状態を保っており、1週間前後から徐々におかしな傾向を示しだし、最後は一気
に破裂するように溶解して水を真っ白に濁らせて死亡します。
また、健康なイソギンか、そうでないかを見極めるポイントは、水中で人間の手で触れた際等に敏感に反応し、どれだけ小さく俊敏に縮めるか、ということがあります。
反応が鈍く、全体に腰が抜けたようにダラっとしているものは、薬物で取られたために弱っている可能性があります。
もし、はじめてイソギンチャクを飼育されるのであれば、タマイタダキ、サンゴイソギンチャクがお勧めです。
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●イソギン同士・サンゴとの接触について
一般的な種のイソギンチャクは刺胞毒の弱い組(シライト、LT,センジュ、タマイタダキ、サンゴイソギンチャク等)と、強い組(ハタゴ、イボハタゴ)にほぼわけることができま
す。まず、同種同士の接触は大丈夫です。異種同士は避けたほうが良いですが、それぞれの弱い組・強い組同士の種の接触ならほぼ問題はありません。ただ、触手(刺胞の
ある)部分はお互いに強いですが、腹の部分は弱いため、刺胞と腹が接触しないように、注意したほうがいいでしょう。
弱い組と強い組の接触でも、端が少し触れる程度なら問題ありませんが、濃厚に触れるとあきらかに弱い方がやられてしまいます。
以前、タマイタダキを手で水中で移動させているとき、うっかりイボハタゴの上に落としてしまい、イボハタの強力な粘着力でガチガチにくっつき、犯されてしまってタマイタダキ
が死んでしまったことがあります。
また、強い組の触手が、弱い組のおなか部分に触れたりしますと弱い方が水ぶくれのように犯され、大きな傷をうけてしまうことがありますのでご注意ください。
あと、サンゴに触れるとサンゴを解かしてしまい、サンゴの刺胞毒よりよほど強力です。イソギンは、本来、イソギン専用水槽で飼育をするのがもっとも安全です。
刺胞毒の強い組のイボハタゴとハタゴが接触してる状態ですが問題はありません。
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●移動と定着について
イソギンは多くの種が、自分にとって定着しやすい場所をさがすのに、水槽を移動することがよくあります。ですがあまりにも長く移動していると弱る場合がありますので、でき
るだけ、各種類にあった場所を用意しておくと良いです。さしあたり、砂と岩があってやや地形が複雑になっていれば、多くの種が定着可能です。
また、水流があまりにも強いポンプの前などに自分から移動して、自滅することもしばしばありますので、できるだけそういう場所をつくらないということと、もしそういうところにい
っていたら、戻してやることも大事です。 ※くわしくは、ページ下部の各種の紹介に掲載しております。
シライト:砂と岩や壁の間をこのむ。 LT:砂に潜り、底面にくっつく。 センジュ:壁や岩を好む。
ハタゴ:岩、壁を好むが、砂地の上に収まることもある。壁にくっついてしまうと組織が引っ張られて自滅する?らしきことが過去にありましたので、できるだけ平面に陣取る
ようにしてやると良いと思います。
イボハタゴ:砂に潜り、底面にくっつく。
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●イソギンの鬼門 ヒーターとストレーナー
重複しますが、危険なのがポンプの吸い込み口のストレーナと、ヒーターです。
まずストレーナーは、剥き出しで飼育するのはあまりにも危険ですので、岩で覆ってしまうか、最低でもスポンジフィルターを使用して吸い込まれないようにしておきましょう。
できれば底面フィルターと直結するのが一番安全です。
ヒーターも大変危険です。イソギンは熱を感知する能力がないのか、ヒーターの上にのっても退けようとせず、そのまま死んでしまいます。ヒーターカバーをつけてもその上に
乗ってしまうと間違いなくイソギンは溶けて死んでしまいます。
ヒーターを岩などで覆ってしまい、仮に付近にきても熱がかからないようにしておくことが重要です。
ちなみにうちの店では何匹も死なせた挙句、ヒーターを水槽の奥の左右どちらかの端に立てた状態で置き、その周りを岩で固めまくって絶対にイソギンが寄らないようにして
います。 ただ、砂に埋めたりすると危険なうえ、その砂の上にイソギンがのったら結局死んでしまいますのでので止めましょう。
とにかくあいては無意識に移動しますのでいつか移動して事故になってしまうと考えておいた方が良いです。
上記のような事故で、部分的に傷を負ったイソギンチャクは、仮にもとが健康な個体でもまず復活は難しく、ほとんど死亡してしまいます。過去、ストレーナーに吸い込まれて
傷を負ったタマイタダキイソギンチャクが一度だけ復活したことがありますが、それ以外はすべて死亡してしまいました。
「今、ヒーターやストレーナから離れた場所にいるからきっと大丈夫・・・。」という考えは、いつか必ず事故を引き起こしますのでどうかご注意ください。
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●水流
サンゴほどデリケートな水流条件は不要で、かなりの適応幅がありますが、なびくような強すぎはよくなく、完全に止まっているような状態もよくありません。
大型のイソギンチャクで飼育しにくい理由のひとつが、この水流条件らしく自然界での流れは、流れというよりも、その一体の水の塊(水塊・すいかい)がまるごとグラッ!グラ
ッ!と振り子のように揺れ動くような流れであるのに対し、水槽内ではポンプで起こす局所的・一方的な流れのことが多いため、なかなか難しいのではないかと考えておりま
す。です。その意味で、あまり大きなものがうまく長期飼育できないのは、水槽の限界かもしれません。
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●クマノミとの共生関係
観賞用のイソギンチャク(シライト、LT、センジュ、ハタゴ、イボハタゴ)には、クマノミの仲間が共生することが多いです。またこれを目的として飼育されていることもとても多く
カクレクマノミとの共存をしたいのでハタゴを飼いたいというご希望も多分に多かったようですが、こちらの実験では、個体差はありますが殆どのクマノミと一般にクマノミが入
るといわれているイソギンには共生する可能性があるということがわかりました。
ただし、これは必ずしも共生するという意味ではありません。場合によっては、同じ水槽にいてもなかなか共生しない場合もあります。
国産サンゴイソギンチャクと養殖カクレクマノミなどという一番共生しなさのうな組み合わせも、無事に共生した場合を確認しております。
問題は共生しすぎる場合で、特にカクレクマノミはハタゴイソギンチャクを大変好みますが、あまりにハタゴに入りまた場合によってはハタゴの口周辺にかみついて内臓を食
べようとしている?らしき行動まで見せることがあり、ハタゴを死なせてしまったことも数度あります。そういう意味ではあえてあまり好み出ないイソギンチャクとクマノミの組
み合わせのほうが、水槽での飼育は好ましいとさえいえるのかもしれないと、最近考え始めています。
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●不調になったら、まず死にます。謝って捨てましょう・・
イソギンは、不調になったらほぼ死んでしまうと考えた方が良いです。口を大きく開いて、中から微細な模様の内臓が出てきたら、まずその固体は死にます。その後、口がと
ても大きく、中から内蔵が大きくせり出してきて、数時間たっても元に戻らなかったら、完全に死亡していると見たほうが良いです。
一時、濃い茶色の細長い屑を吐き出して居るときは、単に未消化物や、水が濁ったときなどに同じようなことをしますのでまだ大丈夫です。
イソギンが死ぬと、水が大変汚れますので、死にかけたらすぐに出すことをお薦めします。ただ、なぜ死んだのか原因は突き止めといたほうが良いでしょう。
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●餌は基本的に、与えない方が良い
これは賛否両論がありますが、一応イソギンチャクは可能な限り餌を与えず、照明を与えて光合成のみを利用して飼育したほうが良いと考えております。
エサを与える代わりに、ミネリッチアクアーレなどの天然海水由来の添加剤などを追加で使用した方が良い結果が得られると思います。餌を与えると、ストレスになったり、未
消化物を吐き出して水が汚れたり、また消化液が出すぎるなどという噂もあり、あまり良い結果にならないことが多々あります。
ただ、マニラ産のシライトイソギンなどが、光だけの飼育で痩せてきそうなら、人工のチップス状のエサ(淡水のプレコ用のエサなど)をアサリの剥き身などの餌を10cmくらい
の個体で1個程度を1週間に1個与えるくらいでよいと思います。
生餌はあまり与えない方が良いと考えておりますが、もし人工のエサを食べないなら、アサリの剥き身を週に1個程度を与えることをお勧めします。
後、イソギンチャクに色がついてきて褐虫藻が増えてきたならそれだけで飼育可能になることもありますので、状態に合わせて給餌を決定されると良いと思います。
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●イソギンを水槽内にいれるという事は、クマノミ類以外の魚が殺される可能性が常にある。
イソギンと他の魚を同居させている方は大変多いと思います。しかし今一度確認しますが、イソギンは刺胞毒をもち魚を捕らえて食べる生き物です。すなわち、クマノミ以外
の魚が、触れたりして死亡したり、食べられたるする可能性は常にあるということを、ぜひ忘れないで頂きたいと思います。
普段は他の魚はイソギンには近づきませんので一見問題なさそうに見えますが、何かに驚いて逃げたときに、イソギンに強くぶつかったりすると死んでしまうことがあります。
現在、イソギンが非常に人気がありますが、もし魚を中心に飼いたいのであればイソギンは避けるのが得策です。特にイソギンに弱いのが小型魚はもちろん、ハギやモンガラカ
ワハギなどです。ハギは刺胞毒に大変弱く、特にハタゴなどには少し触っただけでも死んでしまうようです。また、不思議なことにチョウチョウウオはめっぽう強いらしく、逆にイソ
ギンを突付いたりしていますのであまり食べられることはないようです。しかし、白点に罹りやすいですので必然的にチョウチョウと薬のつかえないイソギン水槽では普段はあま
り飼わないほうがいいでしょう。
ハタゴイソギンにつかまった13cmくらいのワヌケヤッコ
こういうことが、いつでも起こる可能性があるということを認識した上で、飼育をしましょう。
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●イソギンに向いたシステム
イソギンチャクは、水の濁りを大変嫌い、その際は口を開いて何か(主に褐虫藻類)を吐き出すしぐさをします。そのため、イソギンチャクを飼育する際はウエット式フィルターな
ど、透明度を維持しやすいろ過システムがお薦めです。スキマーの使用も悪くありませんが、これは必須ではありません。もともと、エサさえ与えなければあまり水を汚す生き
物ではありません。
当方でお勧めの方式は、オーバーフロー以外では、さしあたりサンゴ類でも同じ、ワンタッチフィルターやパワーヘッドに直結した底面フィルター+エアーレーションですが、も
ちろん外部式フィルター、上部フィルターでも可能です。ただし、ストレーナーのあるろ過方式の場合は、かならずその部分を岩で覆ってしまうなどしないと、イソギンが吸い込ま
れて詰まり、水槽の全滅を招くことすらありますので注意しましょう。
機関誌BL5号に掲載しておりました、イソギンチャクの飼育水槽です。ろ過システムは、底面+ワンタッチフィルターで、刺胞毒の強い組と
弱い組に分けて飼育を行っておりました。双方、掲載のため僅か1ヶ月程度飼育し、後に徐々に販売していきましたが、調子は良いようでした。
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