以下の記事は、2004年頃に実験・判明した記事ですが、これ以降も低比重関連の飼育・病気治療の研究やわかったことは、
海水魚飼育ガイドの白点病・ウーディニウム病での項目で扱っていますので、そちらを続編としてご覧ください。
白点病の対策と実態・低比重飼育・トリートメントについて(2004年)
初掲載:2004年4月2日〜2004年7月30日 最終修正2012/2/1(文書・誤字脱字訂正)
重ね重ね、厳重なお願い ここに公開していることは多大な生体と費用の犠牲の元、こちらで実験をおこなったことによ 当方の実験ではさしあたり低比重の飼育で問題は発生しておりませんが、実施された方から白 実施されて、生体がおかしくなっても当方で責任を取ることは出来ませんし、あくまで最後の手段 なお、この低比重に関するデータや情報などをいただきました、しょうじ様、テリーヌ様、てつ様、 |
●低比重法のまとめ 魚専用(薬品治療をする)水槽と、無脊椎水槽のメンテナンスや管理の違い 低比重方のまとめ2004・7・30 これまでの低比重の色々な使用法を実験した結果、一応全体的な見解と、安定した使用法をご紹介させていただきます。 ・低比重の効果実際の効果と使い勝手 低比重飼育は、もともと白点病を治療するという目的ではじめたのが最初です。ただ、白点には効果があるものの、ウーディニウム病には効果が無く、また低比重にするだけで は、1.008の比重にしてやっと効果が出るという状態で、それより高いと治癒できないようです。 また、この比重では飼育が不可能なものが報告されており、おもに小型の魚が影響を受けやすく、死亡してしまいます。 しかし比重を1.015〜1.016(インスタントオーシャン比重計)<カミハタディープシックス比重計では1.0125〜1.0145>にあわせていれば、ほぼすべての魚に問題なく使用でき ることが結果として出ております。また、この比重でグリーンF・ゴールドなどの薬品を併用すれば水が薄いためかかなり薬の効果が上がるらしく、白点病もなおりやすいという 結果が出ております。 ただしメチレンブルーの使用は敏感な魚には毒性が強すぎて死亡してしまう場合があるため、まずグリーンFゴールドの規定量の半量のみで投薬を行い、それでも治癒がで きないという場合は、メチレンブルーを規定量の6分の1量を1日1回、3日間入れるという方法を、こちらでは取っております。しかし、ほとんどグリーンFゴールドだけで治療が できておりますので最近はメチレンブルーの使用をしておりません。 もうひとつ、低比重の別の大きな効果としまして、1.016程度までの低比重であれば、浸透圧の調節が楽なのか、弱った魚などの体力が回復しやすいということです。入荷の 時などにわかるのですが、1.016程度の比重の水槽に収容するようになってから、魚の生存率がかなり高くなっております。 輸送後や買いたての魚は体力が落ちており、それを回復させるために上記の比重の槽で、薄いグリーンFゴールドによるトリートメントを行って2週間程度をすごせば、病気も 体力も大変良い状態で回復をするということを、こちらの実験でも実感しております。 また普段魚を飼育している水槽も、やや比重を下げて1.017〜1.019くらいで飼育すれば、魚の体に掛かる負担も軽減できて良いと考えております。ただ、これらは当然ながら 「魚だけ」の水槽で可能なことですので、無脊椎およびサメなどの軟骨魚類は除外します。 ・まとめのまとめ 上記の点も踏まえまして、まず安全性を第一に考え、低比重による白点病の治療を実施する際は、比重を1.016程度にして、上記の薬品を併用した方が良いと考えており ます。魚の体力を回復させる目的の使用法で行う際も同様です。むしろ、こちらの方が低比重を使用する上で意味があると考えております。 また、長く飼育して十分に体力がある魚が白点に掛かってしまった場合は、あえて低比重の手法をとらずとも、硫酸銅のみを使用するほうが良いと思います。 1.016程度の低比重にすることで魚がいきなり死亡するということはまず少ないと思いますが、特に白点がひどい状態になったときなどは、どちらにしても硫酸銅の力を借り なければいけないときもあると思います。 そのためには、どちらにしても白点に掛かりやすい魚は「魚だけ」の状態で、いつでも薬品などの手を打てる状態で飼育するのが、飼育を行うのが低比重などの手法以前 にもっとも重要だと考えます。 |
※以下の報告は、上記の結論や現在の魚飼育ガイドに記載しております病気治療方法の基礎になったものであり、現在とは見解が -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ●上記結論に到るまでの一連の実験報告 (初版 2004年4月2日 訂正2008年9月20日) 低比重の方法は、アメリカのサイトや、すでに国内でも試された方も多い飼育方で、「白点病が完治する」という報告が多々あります。そこで、実際にどうなのか、そして低比 重飼育に関することで当店で実験をし、判明しました事を報告いたします。 ただ、ここで記載しておりますことは、あくまで参考にご覧願います。少なくとも、現状でうまく飼育ができているのに、低比重にされたりすることは決してお勧めしません。魚が 、重度に病気にかかり、もうどうしようもなく、手を打つ必要があるという時の手だと考えていただいた方が良いようです。また、これも大変無責任ながら、かりにこれらを実施され て問題などが発生しても、一切責任を終えないことは再確認させていただきます。 また、この低比重飼育方は、魚に対してだけ有効なものであって、その他すべての無脊椎動物は飼育は不可能になります。 始めに 低比重飼育というのは、その名のとおり比重を極端にまで低下させて、飼育水の浸透圧を下げることによって白点などを殺そうというものです。実際の比重は、アメリカのサイト http://www.petsforum.com/personal/trevor-jones/hyposalinity.html を参考にさせていただき、1.008に調整しました。こんな比重で本当に耐えられるのか、ということです が実は多くの魚にとってはむしろ通常の海水より楽になる言う説があります。というのは、魚の体液の濃さ、つまり浸透圧は海水の3分の1であって、薄いです。そして常に外 界に水分が奪われ、それを補給するため水をどんどんのみ、塩類をエラから排出し、なんとか体内の水分を保っているということをやっています。 そのストレスともいえる環境がだいぶやわらぐ、といういい考え方もありえます。 ただし、無脊椎動物、そしてサメ・エイなどの軟骨魚類は体液の濃さが外界の海水よりも濃いため、(もちろんそれだけではないと思いますが)低比重による飼育は出来ません。 実際に比重の調整ですが、本当は数日間の時間をかけ、徐々に比重を下げていくのが懸命だということは承知しておりますが、こちらではあえて普通の水あわせ程度で、1時 間ほどで一気に1.008(インスタントオーシャン比重計を使用)まで落としてみました。結果、ほぼ全ての魚で異常なく、大丈夫でした。 その後、入荷してくる種々の魚を約1時間程度の水合わせで低比重の水槽に収容してみましたが、特に問題は起きておりません。 ただ、どうやら耐えられる比重は1.008くらいまでが限界のようで、1.006では3日後くらいからおかしくなる魚が出てきました。特にパウダーブルーサージョン、キイロハギなどハ ギの仲間、小型ヤッコの仲間でその傾向が見られました。また、場合によっては1.008でも危ない可能性も否定できませんので、下記の薬浴の項に詳しく後述していますが、 低比重のことだけを考えた白点治療には1.008が良いと言うイメージですが、薬浴併用なら、もう少し余裕を見て、1.010くらいが良いのではと考えております。 (下記で、1.016程度までGFGによる白点・ウーディニウムの薬浴の効果が出ることが分かっております。) なお、以下の実験の際使用した比重計は、アクアリウムジステムズ製の以前の比重計”シーテスト”です。これは低比重付近ではほぼ正確であることを確認しております。 ただし、一般的な比重計はかなり不正確なものも多いため低比重飼育にしようするのであれば1‰の海水(10gの人工海水の元を溶いた合計1000gの海水)を作り、比重計 の精度を確認し、更正をしておいた方が良いと思います。 実際の効き目と実験 実験1 白点病への効果 30cm水槽での実験 肝心な効き目ですが、当方で以下のような実験を行ってみました。白点にかかった魚を30cm水槽に入れ、実験を行ってみました。 ただし、一部訂正がありまして、使用した比重計は、アクアリウムシステムズ社製の旧型シーテストであったため、比重を1.007にセットしましたが、実際の比重はもう少し高く、 1.008〜1.010付近であったと考えられます。 (以下低比重飼育実験 簡易レポート) ------------------------------------- いずれも白点病にかかったセダカヤッコ幼魚4cm・ブルードットウオッチマンゴビー6cm・ゴマハギ 4cmの3種を、海水の比重を1.007にまで低下させた別水槽に収容し、約1週間観察を行った。
水量:約10L (30×20×20cm水槽) ろ過方式:底面フィルターとコトブキ製ワンタッチフィルターを直結 ろ材:サンゴ砂小豆大:1cm厚ウレタンマットを底面フィルターの上に置き、使用。 水温:常時26℃ 給餌:1日2回 0.5g程度 フレークフード 照明:蛍光灯20w2本を1日に10時間照射 使用比重計:アクアリウムシステムズ社製 シーテスト 観察結果 水槽に収容後、3日目から目に見えて、各魚種の魚体表面の白点虫が減少し始める。 ゴマハギは5日目に見た目上完治。セダカヤッコは7日目に完治。全体を通して、2週間飼育を行うが、再発・魚体への悪影響等は見た目上なし。 -追加実験- 以上の実験で完治した魚を、通常の比重の海水(比重1.022)に約30分の水あわせ・温度あわせののちに収容し、そのまま1週間飼育をおこなったが見た目上問題なし。 さしあたり、低比重の飼育によって異常が発生したと思われる魚種は現在はなし。その他、低比重の飼育で1週間以上異常がないことを確認した魚類は以下の通り ・チョウチョウウオ科・トゲチョウチョウウオ(以下チョウチョウウオ略)ミゾレ・クラカケハタタテダイ・ウミヅキその他 ・ヤッコ科(フレームエンゼル・アブラヤッコ・ソメワケヤッコ) ・ニザダイ科(パウダーブルーサージョンフィッシュ・キイロハギなど) ・モンガラカワハギの仲間(ムラサメ・クマドリ) ・ニセスズメの仲間(バイカラードティーバック・クレナイニシスズメ・カンムリニセスズメ) ・ハゼの仲間(ハタタテハゼ・アケボノハゼ・ギンガハゼ・他) (参考) 輸送後にストレスなどによって背肉が痩せてしまった魚種の回復が、これまで通常の海水で飼育していた場合にくらべ、顕著。また敏感な魚種の飼育中の死亡率が減少した。 以上 -------------------------------------------------------------------------------- この実験結果からして、少なくとも低比重飼育は白点病には効果があることがわかりました。 実験2 ウーディニウム病に対する効果 上記実験1を行った後、3月中旬頃別の水槽で白点とウーディニウムが双方が併発出たとき、ウーディニウムの方が比重を1.007まで下げてもまったく治る傾向が見えず、結果 当時在庫にあった殆どの魚を死亡させるという惨事を招いてしまいました。 ただ、ウーディニウムと呼んでおりますが、実際の寄生虫の大きさからそう呼んでいるだけで、別物である可能性もあります。ただ、いずれにしても同様の寄生虫であると思わ れます。そのとき、魚の鰓を顕微鏡で観察した写真が以下です。使用したのは、同病で死亡したアカネハナゴイです。
低比重だけではウーディニウム?は治らない、またかえって悪くなる病気もある 上記の当時、このような状況になったとき、残念ながら低比重飼育は病気対策には何の意味もなさないと一旦思いました。白点を殺せても、ウーディニウムやほかのものが寄 生するのであれば意味がありません。また、松かさ病のようになって入荷した魚の病気は、そのままでは返ってひどくなり、死んでしまいました。また他のお客さんで実験されて いる方の報告でも、皮膚病などは、かかっている固体は返ってひどくなる場合があるという連絡もありました。 硫酸銅は使わない方が無難 飼育水槽に大蔓延したウーディニウムをとにかく除去しなければと、硫酸銅を使用しましたら、魚の多くがショック状態になり、アカボシハナゴイなどほ数時間で4匹が全滅してし まいました。しかし銅テスターで水を測定しても、濃度は殆ど上がっていませんでした。飼育水が淡水にちかづいていたことで、魚が通常より急激に銅を吸収してしまったなど、 理由は明確ではありませんが、どちらにしても大変危険であると思いました。 メチレンブルーとグリーンFゴールドが有効(2004・4・11追加・訂正) 上記理由にて、ウーディニウムはどんどんひどくなり、魚はどんどん死んでいく、しかも硫酸銅を使用できないと言う困窮状態になり、なにかしなければと、もう祈る思いでメチレ ンブルーとグリーンFゴールドとマラカインを規定量を急いで入れました。正直、ここまでひどくなって、これら硫酸銅より弱い薬で治るわけはないと思っていたところ、投入して生き 残った魚は1週間で綺麗に完治しました!「ついにやった!倒した!^0^」 余計なことをしましたが、実はこの間、1度だけ硫酸銅を入れたのですが、魚が即ショック状態になったため、すぐにアクアセイフを大量に入れ、中和を行いました。 おそらく、海水では他の成分の緩衝や、浸透圧の関係で効き難かった毒性の低いこれらの薬品が、水が淡水に近づいたことで効きが大変良くなったのではという予測を立てて います。 低比重 + メチレンブルー +グリーンFゴールド の組み合わせは、殆どの病気を駆逐し、しかも魚にダメージが殆ど無い上、弱った体力の魚が低比重の水で、普段よりストレス の少ない環境のため、返って元気になりやすいと言う、非常に有効な環境を用意できることを、今まさに実感し始めております。 ただ、メチレンブルーは、弱いといってもやはり毒性があるため、規定量の1/3〜半量での使用が良いと思います。(2004・4・11追加訂正) ちなみにその後、白点にかかった魚をどんどん入荷していますが、すべてすぐに治癒しています。 海水魚の主要な病気と症状に対し、どのように対応しているか如何に箇条書きにしてみます。 ・白点病・・・・・・・・・・・低比重の時点でほぼ治療できる。加えてメチレンブルーとグリーンFGの ・ウーディニウム病・・低比重で効き目が良くなったメチレンブルー・グリーンFGで治療可能。 ・リムフォシスティス・・(訂正)ヨウ素が効き目あり、比重による治療は効果がある場合と無い場合があり。 ・体力低下・・・・・・・・・低比重になっていることで魚体に対してかなりストレスが減っていて、回復しやすい環境になっていると思われる。実際に当店でも、入荷時に瀕死の魚が ・便秘症・・・・・・・・・・・もともと、昔から真水や低比重で浸透圧ショックを与えることが回復につながるといわれてきましたので、いくらか効果があると思われます。 その他、細菌感染、皮膚病などは、グリーンFGの得意とするところですから、殆どの病気を一括で治療することができるのできわめて有効であると考えております。 低比重の飼育・トリートメントで結果として良かったと思われたこと 低比重飼育もしくは一時的なトリートメントでよかったと思うことは、白点対策というよりむしろ弱ったり輸送で疲れた魚体にたいして大変回復しやすい環境である、ということがも っとも大きいと現段階では考えています。そして、メチレンブルーやグリーンFGなどの、安全では有るが本来海水魚用としての白点・ウーディニウム薬品としては効果がやや弱か ったものが、安全なまま効果が上がったと思われる、ということにつきると思います。 普段の飼育法にも反映できるか それでは、普段から魚を飼育している水槽で、最初から低比重で飼育を行ったらどうかという素朴な考えが出ます。 上記でも述べましたが、基本的に、何も問題がないのにわざわざ低比重に変更し、飼育を行ってかえって何か問題が出たら意味がありませんので、基本的に避けてください。 その後、チョウチョウウオ・ヤッコで試しておりますが、さしあたり大丈夫なようです。 先に申しましたように、皮膚関係の病気やウーディニウムは出やすい場合もありますので、少しでもおかしくなりそうなら、メチレンブルーとグリーンFGをいれてやる必要が あると思います。硫酸銅よりはずっと安全に治療が行えると思います。また、殺菌灯の使用も効果が期待できます。 いつも薬を水槽に入れておくわけにもいきませんので、さしあたり低比重だけで飼育を行い、病気が出る兆候がでたら、すぐさま両方の薬を入れ、治療後、活性炭を使用して で色を抜く、という手が一番良いかと思っております。 活性炭は本当に綺麗に色が抜けます。60cm水槽で、¥50〜¥100の活性炭を2個もいれておけば、1週間たらずに綺麗になります。また高価なものほど早いです。 もともと水槽についてきた黄ばみも取れますので良いようです。 普段の使用法では、またこういう飼育法の場合、比重は、1.010くらいが良いのでは考えております。一応1.008くらいまで大丈夫なようですが、前述したようにこれより少しで も下がると魚がおかしくなってしまうので、多少余裕を見、病気がでたら、薬をつかう、というのが今のところ、得策だと考えております。 ただ、一度治療してしまえば、新しい魚を入れない限りは、病気の発生も殆ど無いはずです。 追記・2004・4・6 ろ過バクテリアについて 少し書き忘れていたことがあります。ろ過細菌に対する事項が抜けておりました。低比重、すなわち汽水状態にすることにより、ろ過細菌が死んでしまうのではないかという疑 問がでてきます。確かに、死んでしまうものもあると思われますが、実際は普通の比重で飼育している状態で、低比重に変えても、亜硝酸等の発生は殆ど起きないのが現状で す。 ただし、それまで無脊椎動物などを飼育し、水槽内にヨコエビやゴカイなどの生物がたくさん沸いていたような環境は、いわばそれらを一気に殺してしまうしまうので、水が汚れ てしまいます。こういうときは、徐々に海水を薄めていくのがよいと思われるのですが、ただ、徐々に海水を薄めていくと、その過程に置いて白点が出やすいので難しいところで す。ちなみに、私の場合は、上記のような水槽でも、一気に低比重にしてみました。すると、やはり翌日〜2日間くらいに水が汚れて白く濁りましたが、一応そのままで綺麗にな りました。ですがあまりにひどい場合は、水替えが必要になると思います。それ以前に、あまりこういう虫がたくさん湧いているような無脊椎水槽的な状態から低比重に替えるの は、できれば避けたいところです。もともと魚しか飼育していない水槽であれば特に問題は少ないと思います。 |
第一回 白点のライフサイクルと実態
ここでは、我々マリンアクアリストにとって最強の難関とも言える、奥様・・(私はいませんが)ではなく 白点病について、私の知っている限りのことと、対策を記したいと思います。 一般論は別にして、その他のことは私の実験や観察に基づいてのことですので、間違っている可 能性もあります。しかしそれでも、一般的に言われていることとかなり違う事があるのは確かのよう です。 白点の一般論とライフサイクル 白点というのは、だいたいがスズメダイやハゼなどはあまりかからず、特にチョウチョウウオ、ヤッコ、 ハギが罹りやすい病気です。 海水魚の病気の代名詞になっているほどの病気で、原生動物の1種が寄生し、体に0.5mm以下の 白点が見えるのが特徴です。やがて白点が増え、魚のえらなどに寄生し魚が死んでしまいます。 白点病虫の生活サイクルは、まず魚に付着し、約3日間魚体から栄養を吸収し、大きくなって離れて 即〜約数日後、約100〜200の仔虫(遊走子)に分裂します。それでまた魚に付くというサイクルです。 新たなライフサイクル? そして、水温にもよりますが、親虫が分裂して仔虫が飛び出し、それが水中を泳いで、2日間くらい たって宿主に付着できなかった仔虫は死ぬと言われていました。 ところが、これがどうやら死んでいないようなのです。長く飼っておられる方なら判ると思いますが、 まず、白点が蔓延している水槽に、新しい元気な魚を入れると、3〜4日くらいで魚の体表に白点 が見えるようになります。これは、蔓延している水槽に仔虫が水中におり、それが魚を入れた日に ついてだんだんと大きくなってくるのですから、これなら通常です。 しかし、それまで白点があまり出ていなく、ある日、濾過器や底砂を巻き上げて翌日に一気に白点 が出る場合があります。これが、どうして「翌日」なのか?ということです。 また、白点が蔓延した水槽でも、2週間も水槽を置いておけば白点は自滅するはずでしたが、 私の実験では、いくら待っても新しい魚を入れると3〜4日後にすぐに発病しました。水温は25℃前 後でした。 仔虫は砂の中で生きている!? そうして到達した結論が、もしかすると仔虫が死なずにずっと生きているのではないかということです。 もちろん、濾過器や底砂をいじったときに、それまで休眠状態で潜んでいた親虫が破裂、分裂も したことも考えられますが、先に記した、肉眼で見える程度まで膨らむ時間の疑問があります。 また、私は自分で顕微鏡で白点の親虫を観察しながら、親虫をピンセットの先でつぶしてみたことが あります。親虫は、顕微鏡でみますと、ちょうど0.5mmくらいの大きさの「真っ黒の玉」です。
それをつぶすと、それこそ中から1,000匹くらいは居るかのような仔虫が出てきました。ただし、こ の仔虫の大きさは、非常に小さく、0.001mmくらいで、一般的に言われている大きさ(0.05mm) よりもっとて小さかったです。(もちろん水温その他の影響もあると思います。) そして、白点が何週間も蔓延していた水槽の底砂を、一部取り上げて顕微鏡でみますと、下記の ようなものが無数にみられました。1個の大きさは、ちょうど0.05mmくらいでした。
これがもし白点であれば、親虫でないことは確かです。しかも大きいです。あるお店の方がおっしゃ るには、白点は仔虫でも細菌を食べて生きているということでした。もしそうなら、砂やろ材の中で あるていど成長し、遊泳能力は失っていても魚に付さえすれば寄生できるじょうたいなのでは?とい うのが、推測です。 高水温飼育の論理 じゃあ、どうしようということですが、上記の理論では、死ぬことなく水槽内の白点はいくらでも時間 とともに増えていくじゃないか、ということになります。実際、そういう雰囲気で、薬をつかえない無脊 椎水槽でだんだんと白点が出やすくなって、ついに本格的に発病、全滅・・。ということになってしまう ことが多々あるとおもいます。 それと、高水温飼育にしておけば、白点が出ないという話もよく聞きます。ですが、逆に活動が活発 になるという話もあります。これはどういうことかといいますと、どうやら、27.5、あるいは28℃以上に しておけば、やっと、魚に寄生できなくて砂などに潜んだ白点の仔虫が体力を使い果たして順次、 死んでいくようなのです。ですから、 白点が非常に少ないときからこれをやっておけば、多く発病しない限りつねに数を減らしていける、 ということではないでしょうか。一旦発病してから水温だけを28℃くらいにするだけでは、白点を応援 してしまうだけですが、白点にとっての餌、すなわち魚にほとんど寄生できない時から水温だけを上 げておけば、体力を使い果たさせて殺すことができるであろう・・。というところです。 つづく |
予定 第二回 薬で殺す方法と魚種
飼育を始める前に基本的な計画を立てることが第一歩 実際は、発病が本格化してきますと、やはり薬の頼る必要がでてきます。ただ、最近は無脊椎と魚を 一緒に飼育することが、なぜか一般的になってきてしまい、また店がやみくもにライブロックを薦め、それ がないと飼育できないように言うので、とにかくライブロックを入れてしまっている水槽になっている場合が 多く、ライブロックのためだけでも薬がつかえないという状況がよくあります。 そのために病気になった魚だけを別のところに入れて治療し、また本水槽にもどして再発して・・。 とこんなことを何度もやっているうちに魚が死んでしまいます。 魚にとっては、今住んでいる水槽にそっと薬が入るのがもっともショックが少ない治療法です。それと、白 点病が発生したときは、その「魚」ではなく、「水槽」そのもの全体が病気にかかったと思うべきです。 ですから、病気になった魚だけを一時別にして、なおったら本水槽に戻すということは、すぐにまた再発 を招いてしまいます。 最初は「魚だけ」か、「病気にかからない魚+無脊椎」からはじめましょう。(2003・11・22) 治療の前に、もっとも大事なことは、飼育する生き物を限定することであり、下記のどちらかにすべき です。 @もし病気が出ても治療できる状態で(すなわち無脊椎を飼育せず)飼う。 A無脊椎と飼育するのであれば白点病に対して強く、普通に飼育していれば病気にまずかからない 魚だけを飼育する。 @はいつでも手が撃てますし、Aは撃つ必要がありません。はっきり言いましてこの点を踏まえてお きさえすれば、困った状況にはならないのです。白点は発病が怖いのではなく、発病しても治療が出 来ない状況を作ってしまっていることが一番困難なのです。 白点病にかかりやすい魚種はチョウチョウウオ、ヤッコ、ハギ、ニセスズメの仲間などです。これらが 白点に罹ると、「罹る」=「水槽内の白点の数が爆発的に増える」ですので、本来罹らない魚にまで 被害が及んでしまいます。 もともと特にサンゴ類は体半の魚との長期の同居は難しく、すべてのサンゴに対してほぼ完全に無害 といえる魚は、現在販売されているものの種のなかでは小型のハゼ、ハナダイ、ニセスズメ、その他 の小型魚の仲間など極わずかの種しかいません。むろん、サンゴの方にも魚との同居に向いた種も ありますが、種類を選ぶ必要があります。 サンゴ全般を飼育するのであれば、少なくとも最初のうちは他の魚種を控えたほうが良 いです。そうでなくとも海水魚は飼育が難しいとされる生き物なのですから、せめて人の采配でよい 結果をだせることくらいは、自分の希望をある程度辛抱してでも合わせないとうまく飼育することが できません。 サンゴ水槽にヤッコやハギを入れて白点が発病して手がうちにくく、、また普段から特にヤッコがサンゴ をしばしばつつくため、つねに両方とも状態が悪いようになっている水槽をよく見かけます。たしかに、 サンゴと魚を一緒に飼育したいのは私も同じですが、もう身にしみて、同居は難しいと悟りました。 こういうことはできるだけ避けたいものです。 ただしサンゴ水槽には、最低1匹は魚が居ないと、ヨコエビなどの横行があまりに激しく なり、サンゴの食害を招くことになりますので、小さなハゼ1匹〜でよいですから入れておくことが必要 です。ぜひ、サンゴ水槽に一度ハタタテハゼなど遊泳型のハゼ数匹だけ入れてしばらく飼育してみて ください。サンゴの調子は大変良くなります。 薬による治療 実際に白点が出始めたときは、やはり薬による治療をしなければいけなくなります。 私は下記の2種の方法のどちらかをお薦めします。もちろんこれは、無脊椎はダメです。 @硫酸銅治療 もうご存知の方も多いと思いますが、銅イオン、また硫酸銅による治療です。白点が多く出てきてし まった時はこれに頼らなければいけないのですが、使用法を誤りますと魚に危険です。 -使用法- (銅イオンの場合は、取扱説明書にしたがって投薬してください。下記は硫酸銅の結晶を用いる場合 まず硫酸銅1gを1Lの水に溶かします。この溶液を1Lの水に1cc入れると1ppmの濃度になります。 この量を、12時間に1回入れ、まず約3日間(すなわち6回の投入)続けます。その後、今度は24時間 -その他注意- 使用法を誤ると魚を死亡させてしまいますので充分に注意が必要です。また、硫酸銅を使用した場合、 硫酸銅は劇薬の有毒物質ですので子供の手の届かないところに保管し、また余ったものを水道などに AグリーンFゴールド顆粒(+メチレンブルーのダブル混浴)治療 私は個人的にはこちらが好きです。 一般的にはグリーンFゴールド顆粒はすでによく用いられているようですが、私はメチレンブルーとの併用を -使用法- 各薬品に書いてある使用料を1回だけ使用します。 -これまでの良かった使用感- 白点ではありませんが、病気と炎症でもうぼろぼろになったマクロス(大型ヤッコ)が、3週間程度を経て完 |
第3回 濾過器の安定と底砂
安定したウエット濾過層の実力 「水質または水槽が安定してくると白点が出ない、または濾過器が安定していると白点に罹った魚を 収容しても自然治癒する」という事が昔からしばしば言われます。確かに事実です。しかし、これは水槽が そうそう簡単にはこういう状態にはなってくれません。まず、私自身は完全にこの状態になったことのある 水槽は、関西ではお店で2件しか見たことがありません。両方とも、ウエット濾過層でした。今はナチュラル システム、ベルリンシステムが流行っていて、いつのまにか濾過層をなくすのが流行りみたいになっていま すが、私はこれは、少なくとも魚を飼育する上では不適だと思っております。 確かに硝酸塩は増えにくいかもしれませんが、水質の安定と水中の雑菌の低減、硝化反応そのものに関 しては、濾過層が行ってくれることであり、なにより硝酸塩の増加を防ぎたいために他の要素をすべてな いがしろにしている気がしないでもありません。 「魚より硝酸塩が大事」で、まるで「命より健康が大事」という主義のような感じがします。 底砂の状態 仮に濾過層が安定し、白点を除去できる状態になっていても、もう一つ重要なポイントが底砂です。 ここが白点の巣になっていると、いつでも発病してしまいます。これも以前、私の良く知っている尼崎の 玄人のお店曰く、「いつも触って綺麗にしておくか、あるいはまったく触らないか」のどちらかだそうです。 前者の場合、毎度おなじみのマガキガイ、底ハゼ類などで掃除をすることになります。後者の場合、底砂 をとにかくいじらない状態にしておくのですが、これはそのままでは危険なので、私は数cmの岩、また庭 用の玉石を敷き詰めたりして、魚が容易に底砂を巻き上げないようにしています。 また、底砂を敷かなければどうなのか?ということもあります。これは、底によく水流があったり、また他 の生物が綺麗にしてくれているのなら白点はあまり居ませんが、常にゴミが溜まってよどんでいるなら、 砂があって掃除されていないときと状況はあまり変らないようです。 |
第4回 濾過層の役割と現在の流行
濾過層の役割 「水質または水槽が安定してくると白点が出ない、または濾過器が安定していると白点に罹った魚を 収容しても自然治癒する」という事が昔からしばしば言われます。確かに事実です。しかし、これは水槽が そうそう簡単にはこういう状態にはなってくれません。まず、私自身は完全にこの状態になったことのある 水槽は、関西ではお店で2件しか見たことがありません。両方とも、ウエット濾過層でした。今はナチュラル システム、ベルリンシステムが流行っていて、いつのまにか濾過層をなくすのが流行りみたいになっていま すが、私はこれは、少なくとも魚を飼育する上では不適だと思っております。 確かに硝酸塩は増えにくいかもしれませんが、水質の 安定と水中の雑菌の低減、硝化反応そのものに関しては、濾過層が行ってくれることであり、なにより 硝酸塩の増加を防ぎたいために他の要素をすべてないがしろにしている気がしないでもありません。 「魚より硝酸塩が大事」で、まるで「命より健康が大事」という主義のような感じがします。 ベルリンシステムと白点 先にも少し触れましたが、現在、海水の珊瑚を中心にした水槽にベルリンシステムというのがあります。 ベルリン式は、糞などの蛋白質が高分子の状態でいる内にプロテインスキマー(以下PS)で取り除こうと 言う考えで、それが分解されてアンモニアになり、最終的に生成される硝酸塩を元から取り除いておこうと いうものです。そのために、濾過器があると硝化反応が進みやすいので取ってしまうという考えです。 珊瑚を飼育するためには、差し当たってはそれほど強力な濾過が、元々いらなかったという事です。 餌を与えたり、魚が多く入っていれば、それだけ水も汚れますが、餌が少なく、ほとんど珊瑚だけの水槽で あれば、水槽内にいっぱい珊瑚を入れて、何とエアーレーションだけで飼っておられる方もいらっしゃいま した。つまり、特に好日性の珊瑚であれば、餌をまったく与えずに飼えば、死なない限り水はあまり汚さな いと考えていいと思います。 海水魚は淡水魚よりむしろ強力な濾過器をつけなければならないと言うのがほんの数年前まで常識でし た。フルドライろ過で珊瑚を飼うという事が一つの最高のシステムのように私も思ったものです。 確かに、魚類や、陰日性の珊瑚に餌を与えて飼育する場合では濾過槽はとても重要だと思います。しか し、ナチュラルシステムで飼育できているという事は珊瑚類はあまり水を汚していない事の証拠だと思い ました。では結果的に、「濾過層がいらないのではずす」ということは「濾過層がある」ことに比べてどうな のか?ということになります。 いくら汚さないといっても、もしどれかのサンゴなどが死んでしまったり、なにか起きればいざの時のアンモ ニア、亜硝酸、そして水の濁りの処理能力が大変低いため、困った状況になりけりです。 で、PS自身が取っている汚れは、カルシウム、マグネシウムと、見た目以外はほとんどが取らなくて良い物 をとってしまっています。もちろん、取るべき汚れも取っていますが、考えれば考えるほどPSは魚水槽向き なのでは?と思ってしまいます。 ところで、肝心な白点に対してですが、濾過器が無い以上白点を積極的に取り除く力はあまり無いと考え るべきだと思います。また物理的に水中から濁りを取り除く力が弱いため水中の雑菌、細菌数も多くなっ てしまうと思われます。どんなシステムでも大概は時間が経てば、大きな有機物は沈殿してさしあたり水は 綺麗になります。しかし、何か起きたとき、また普段から水中の菌数が少ないことは魚の病気の発病の頻 度に大きくかかわってくるはずです。 最後に 最後に、白点で困らないためのことをまとめておきたいと思います。 1.白点に罹りやすい魚を飼育する場合は、ライブロック、無脊椎、など薬がつかえなくなる生き物を入れない。 2.濾過層は他の病気に対する安定を考えても、ウエット状態になっているものをお薦めします。 3.海水魚は誠実な店主がやっている普通の値段のお店で買う。(ヤッコ・チョウチョウウオが¥1500程度^^) 一応終わりです。それでは失礼駿河の国に茶の香り。 |