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サンゴと密漁・法律・現状 (更新掲載 2013年6月24日)

 以下の記事は、以前から掲載しておりましたが、当方の更新ミスで長期間掲載が消えておりました。誠に申し訳ありません。

同ページには他にも記事がありましたが、現在の後悔日誌と類似した内用でしたので、密漁と漁業法関連の記事のみを編集・整理し、再掲載させて頂きます。

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「ハードコーラルを保護している法律・その他について」

初期掲載 2008年3月7日

 多くの方がご存知のように、国内のハードコーラル(造礁サンゴまたはイシサンゴ)は基本的に採取を禁止されています。

しかし現在の法律は”国内でハードコーラルを一切とってはいけない”という明確な法律ではなく、やや複雑でいくつかの法律が重なっています。

 このたび、その詳細を改めてまとめ、近畿大学農学部水産学科 水産経済学教授 榎 彰徳先生にご協力を頂いてお話を伺い、日本国内のサンゴを保護している法律とそれ

にまつわる内容を伺ってきました。 それを以下にまとめ、ご報告するものです。

ハードコーラル(イシサンゴ)を実質的に保護している法律

@自然公園法による保護

 国内のサンゴ礁の多くは、環境庁の制定した自然公園法によってすでに国立公園に指定されており、ここでの採取は原則的に禁止されています。ただ、昨今のミドリイシな

どの養殖を目的としたための僅かな採取は、環境庁・都道府県知事の許可で沖縄県などで一部採取がされています。

A漁業調整規則による保護

 現在、沖縄県と東京都(小笠原諸島など)においてのみですが、各県の漁業調整規則によってハードコーラルの採取は明確に禁止されています。

B漁業権による保護

 まず、仮に上記の国立公園・沖縄県・東京都以外にハードコーラルがあったとしても、それを漁獲できる可能性のある人は、漁業許可を得ている漁業者に限られ、都道府県知

事の許可が必要になっています。

 そして、まず沿岸漁業では、漁協で採取する許可をされている種だけを取ってよいということであって、商用に”生きたサンゴを採取してよい”という漁業権は、現在事実上発生

しておらず、また認可されることも基本的に無いということです。

 また、沿岸より沖の沖合漁業の場合は都道府県知事または国の”許可漁業”であり、こちらは知事や国が許可を出した場合のみ漁獲可能ですが、こちらも商用にサンゴの

採取が許可をされることはまずありえません。また、例外として漁業者以外が採取してよいという場合は、特定の試験機関、水産試験場、水産庁などの調査・研究目的など

に限られるという事です。

C国土交通省による、砂や岩(ライブロック)の管理

 砂(海砂)や海底の岩については、これは厳密にいえば国土交通省の管轄になり、これを漁獲し、商用に販売することは国土交通省の許可が必要になることです。

密漁にあたる行為 

 上記の法律、主に漁業法に違反した採取を行うと、これは密漁になります。しかし、国立公園以外で一般的な釣りや潮干狩りなど、家庭内などでの極小規模な食用・飼育

のための採取については、いわば国民の”レジャーの権利”として、漁業権を持つ漁業者・漁場に影響がなく、漁業に影響の無い程度であれば、問題なしとして許可されて

います。 ただし大量に取ったり、採取したものを販売しては漁業法違反になります。

 では、個人の方があくまで潮干狩りで国立公園また東京都・沖縄以外の地域で仮にイシサンゴがあったとして(主にキサンゴの仲間などでしょう。)少しなら捕っても良いの

かとなりますが、これは大量に採取しなければ、一応良いとされています。 また、台風の後などにミドリイシなどエダ状のサンゴが割れて海岸に漂着したもの程度を少量持

って帰るくらいなら、特に問題にはならないでしょう。このあたりは、個人のマナーが問題になると思います。無論、商用やネット販売のために採取することは一切出来ません。

 ただ、個人の採取でも県条例などで禁止されている生物もありますので、この点は注意が必要です。

過去にあった、サンゴ網漁業(サンゴ引き)と呼ばれる漁業とは

 過去、長崎県・高知県などで、装飾用のためのサンゴの骨格をを採取する”サンゴ引き(曳き)”と呼ばれる漁業が存在しました。

具体的な漁法の概要としては、漁船から専用の漁具を投入し、船を停止させて網を潮流に吹流し、網片にひっかかるサンゴを採取するというものです。

したがって、これは基本的にすでに死亡した、または死亡するであろうサンゴの骨格のみを対象として採取されるものであったようです。

 (参考文献 金田禎之著「日本漁具・漁法図説」p.156-157 成山堂)

合法的に国産のハードコーラルを流通させる(得る)方法はないのか

 国内で、商用目的でハードコーラルの仲間を捕る事は、上記の法律で禁止されています。しかし、食用の漁業において、伊勢海老の刺し網やそこ引き網などで必然的に掛

かってしまうサンゴが大量にあります。種類的には、キサンゴやヤギ、陰日性のサンゴが主ですが、稀にミドリイシやオオバナ、コハナガタなどもかかることがあります。

 これらは、漁業系廃棄物であって、海中や港に捨てることは原則として禁止されており、漁業者の方は大変苦労して処分をされています。そして、なんとこれらは漁港付近

で焼却処分されてしまっているという、我々アクアリストからすれば耐え難いような処分がなされています。

 当方の友好店であるアクアマリンズさんなどは、これを見るに見かねて、販売することを決意されたという事です。

 今後、食用の漁業に従事されているこれらの漁業者の方々と連携し、これらの廃棄物サンゴをもっとアクアリウムの世界に引きこむことが出来れば、法を犯すこともなく、今ま

では悲惨にも処分されていた貴重なサンゴを飼うことができ、極めて有効でであると言えるのではないでしょうか。

(以下、2013年6月23日追記)

ワシントン条約とは

 ワシントン条約とは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約で、主に英文訳の頭文字をとって”CITES”サイテスと呼ばれます。

 これらの生物の輸出入に関係する条約です。

ハードコーラルは、このCITESUに該当し、国家間の取引が制限付きで許可されており、厳しい手続きが必要になります。

 輸出の可否自体は各国の方針や法律に準拠し、日本は原則的に自然公園法にもとづく国立公園法、漁業法、漁業調整規則によって採取・販売は禁止されています。

現在、輸入されているものは、主にインドネシア、ベトナム産です。

国内外での密漁

 日本国内でのハードコーラル(造礁サンゴ)の採取は先の法律で原則的・実質的に禁止されており、また生きたハードコーラルを採取してよいという漁業権も発行されて

いないはずですが、昔からこの業界ではサンゴの密漁が横行しております。私自身が、生体業者と直接話をしたときに「密漁物を扱っているが、現行犯でなければ逮捕され

ないのでかまわない」などという話を聞きました。

 もちろん、業界の雑誌等にはほとんど、あるいはまったく問題にされたことはなく、密漁を行っている業者や密漁物を大量に販売してきた店や業者等の宣言、広告をしてい

るような状態です。日本近海で採取される種類には色が極めて綺麗な、たとえばオオバナサンゴのマルチカラーなどがよく採取され、またミドリイシ類も輸入より密漁物の方

が安価であるため、流通しやすい傾向にあるようです。海外からの直輸入でない限り、握りこぶし程度以上の大きさのワイルドのミドリイシが¥3000台で売られているなど、

普通は考えられません。(サイテスを経て輸入される一応、正規の輸入ものでは、卸価格でも¥3000を割ることは少ないのです。) 

 もっとも、この密漁も乱獲されすぎて昔ほど取れなくなっておりまた近年には不況でうれなくなり、また取り締まりも強くなって数年前にも沖縄で密猟者が逮捕されています。

店では、しばしば、環境省からの厳重注意が各店に入る事もあったようでそのときは一旦控えるようですが、すぐに同じ状態に戻るようです。

 次に海外での密漁ですが、これもやはり多いようです。サイテスの手続きをきちんととって輸入されているサンゴでも、現地で漁業権を持っていない人が採取したものを、現

地の輸出会社(シッパー)が買っている現状はやはり多いようです。これだけは、現状日本の我々の店がいくらまじめにしようと思っても限界がありますが、せめて誠実で法を

守ろうとする日本の卸会社と取引をすべきではないか、というところです。

 せめてこの仕事に関わっているならば、サンゴを守る最低限の法律くらいは守る意識や努力やプライドを持つのが当然ではないかと思いますが、サンゴの飼育方法や器具機

材、色形に拘る一方、なかなか、そういった最低限のモラルは期待できそうにありません。ここにも、品性と本性が現れています。

 むしろ、当店が昔からこういうことを唱えることには、冷ややかな視線と逆恨みがあっただけでした。

 どうかお客様も、あきらかに密漁物とわかるようなものをあえて購入されるようなことはできるだけお控えくださいますよう、お願い申し上げます。 

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