陰日性サンゴ飼育ガイド
更新履歴
過去から掲載していた研究記事と飼育図鑑をあわせ、2012年9月21日以降、飼育ガイドとして改定中です。一応、ほぼ終わりました。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 陰日性サンゴ飼育の概要 陰日性サンゴは、基本的に飼育が難しいです。その難しさは好日性サンゴのそれとは違って、腐食などの死亡は起こりにくく、突然死亡はしないものの、とかく給餌が必要、 陰日性サンゴには、大きく分けて主にヤギの仲間、キサンゴの仲間、トサカの仲間があります。他、分類は違いますが、ウミエラ、またクリスマスツリーと言われ砂に体を埋 水温の維持 陰日性サンゴは基本的にやや低い水温を好む性質があります。ただ、輸入でインドネシアから入ってくるもの、また沖縄産ではイソバナなど一部の種類を除いて、ほぼ好日 初期の当方でのヤギ・陰日トサカ飼育法 以下に、2005年頃、はじめて陰日性サンゴが長生きをするようになった環境の水槽をご紹介します。(本ページ更新前にも掲載しておりました)
水槽は60*45*45cm約100Lです。水槽の底にはパウダー砂を敷いてあります。濾過器にはニッソーの密閉式フィルターの小型のもの(プライムパワー10)を使用し、濾過器内 このシステムで狙っていましたのは、与えた餌が水流にのって水中を舞い、水槽の底がパウダー砂になっているので砂中に潜りにくくし、ヤドカリやマガキガイなどが掃除しな 当時はこのまま飼育しておりましたが、考えられる改良点として、水槽の底にゴミの沈殿物がたまってきますので別途上部・密閉式フィルター、あるいはスキマーを、給餌後 このときの生体の状態 全体的に、サンゴはあまり痩せずにもっておりました。当時、少なくとも当方ではヤギ類は好日性サンゴの水槽でそのまま飼育していると、1ヶ月とまたずにやせてきました。 @ A @去年(2004)の11月頃からいるヤギです。(撮影時は2005年2月頃です。) 長期間在庫していたピンクのビロードトゲトサカに「根」がいっぱい生えていました^^;取るときにブチっといったので驚きました。 上記は一例ですので、他の飼育方法も他種考えられます。上部フィルターを時間で キサンゴの仲間の飼育 キサンゴの仲間は、トサカ、ヤギ類のように水中の浮遊しているエサを食べますが、性質が少し違い、開かせ方、大きなエサの与え方が重要になりますので、補足致します。 給餌について 上記でも説明しましたが、以下に特に開きにくい場合のもう少し詳細にお勧めの手順を紹介します。 1.冷凍のエビを少量の水ですりつぶしたり、ミンチにする。 なかなかキサンゴが開いてくれない場合は上記を、1週間に3〜4回程度行います。回数は多いほど良いのですが、ろ過が追い付かない場合もありますので、水換えをしな 各種の飼育しやすい順 キサンゴの仲間を飼育しやすい順に紹介します。ここでの飼育しやすさは、主に開きやすく、またエサを食べてくれやすいということです。 @ハナタテサンゴ、ウチウラタコアシ※ウチウラタコアシサンゴはキサンゴ科ではなく、センスガイ科ですので、少し種類が遠くなりますが、ここでは一緒に扱います。 本二種は、かなりポリプを開きやすく、また口が大きいので大きなエサもすんなり食べてくれることが多い種です。結果的に、長期的な飼育も楽で一応私が今ほぼ確実に Aイボヤギ、エントウキサンゴ、ジュウジキサンゴ、オオエダキサンゴなど 上記の給餌方法でポリプはなんとか開いてくれるのですが、かなり頑張って給仕しても徐々にやせてきてしまうことが多い種です。 Bオオイボキサンゴ、ナンヨウキサンゴ、シロバナサンゴなど ものすごくきむづかしく、なかなかポリプを開いてくれません。最初は、開いていない状態で口に押し込んで慣れさせていくしかないと思います。また、開きやすくするためにも Cオノミチキサンゴ ポリプが小さくて給餌しにくく、反応はBと同様なのですが、こちらは体力が無くて時間があまり無いため、難しいです。どうしてもやせてしまいます。主に漁業廃棄物のみで
過去の飼育例@ 上記水槽は60×45×25cmくらいの状面から見る水槽でした。 過去の飼育例B 機関誌BL3号作成の際に、30cm水槽で飼育していた例です。手入れがしやすく、また水換えもバケツ一杯で済むので案外飼育がしやすかったです。 過去の飼育例A
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-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 各種紹介 キサンゴ、近縁の仲間 |
------------------------ 名前 |
名前 |
痩せにくさ (体力) |
給餌の しやすさ、 開きやすさ |
適当水流 | そのほか、解説 ------------------------------------------------------- |
イボヤギ |
丈夫 |
普通 |
中〜強 |
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ウチウラタコアシサンゴ |
丈夫 |
易しい |
中〜強 |
||
エントウキサンゴ |
普通 |
普通 | 中〜強 | ||
オオイボキサンゴ | 丈夫 | 難しい | 中〜強 | ||
オオエダキサンゴ (旧名エダイボヤギ) |
普通 | やや 易しい |
中〜強 | ||
オノミチキサンゴ | 弱い | 難しい | 中〜強 | ||
タバネイボヤギ | 普通 | やや 易しい |
中〜強 | ||
ジュウジキサンゴ (旧エントウキサンゴを含む) |
普通 |
普通 | 中〜強 | 2023/8/29 写真は閉じている状態です。以前はエントウキサンゴと種が分かれて |
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ハナタテサンゴ |
丈夫 | 易しい | 中〜強 | 2023/8/29 キサンゴの中では特異的に丈夫、生命力の強い種で、 |
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 陰日性のトサカ(ウミトサカ)、ウミエラの仲間 |
------------------------ 名前 |
名前 |
痩せにくさ (体力) |
給餌の しやすさ、 開きやすさ |
適当水流 | そのほか、備考など ------------------------------------------------------- |
ウミイチゴ |
丈夫 |
易しい |
中〜強 |
陰日性のトサカの中では大変丈夫です。 | |
ウミエラの仲間 |
痩せ易い |
普通 |
中〜強 |
数種あり、体の中心に硬くて細い骨が一本通っています。 なかなか給餌してもやせやすく、長期の飼育は難しいです。 |
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ウミサボテン |
普通 |
普通 |
中 |
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トゲトゲトサカ |
痩せ易い |
易しい |
強 |
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ビロードトゲトサカ |
やや |
易しい |
強 |
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クリスマスツリー | 丈夫 |
? | 中 | 砂の中に体を半分くらい埋めて飼育すると良いようです。飼い方として は上記ウミサボテンにほぼ近いものです。 縮んでいるときは小さなツボのような塊になり、開くと写真のように木 のような形になります。大変面白いいきものです。 分類上は好日性のトサカに近いと聞いた事がありますが、あまりよく分 からない種です。 一応好日として光を与え、その上で水流と給餌を行ったほうがいいで しょう。いきなり死亡することはありませんが、徐々にやせてしまうことが 多いです。 |
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ヤギ・近縁・類似の仲間 ヤギ類は上記のトサカ類と飼育方法は自体はほぼ同様ですが、細身のためにやせやすく、種類にも差異がありますが長期的なより痩せ易い多く、全体的には飼育は難しい |
------------------------ 写真 |
名前 |
ヤギ類の 中での 痩せにくさ (体力) |
給餌の しやすさ、 開きやすさ |
適当水流 | そのほか、備考など ------------------------------------------------------- |
イソバナの仲間 | 弱 |
? |
中〜強 |
水温がヤギ類でもやや低め20〜23度程度が好ましい ようです。少しでも高水温になったからといって死亡はしな いようにも思いますが、ポリプを開かせるためにはやはり 低いめがいいようです。 死亡しても溶解はせず、ポロポロと硬いままで崩れて行きます。 |
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ウミウチワの仲間 (写真のものは近海種) |
大変弱 |
普通 |
中〜強 |
大変繊細で美しいのですが、共肉が大変薄く、ポリプも 小さいので維持が難しい種です。ポリプの開きは悪くありません。 形状的にはほぼ平面方向にだけ扇のように枝が伸び、ところどころ 癒合(組織がくっつく)します。 |
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オオバナトゲナシヤギ の一種? (写真のものは近海種) |
弱い |
普通 |
中〜強 |
国産の漁業廃棄物で三重県から以前入荷した種です。 温帯にいる仲間ではポリプは開きやすく、数も多いので 頻繁に給餌すればかなり維持できそうなのですが、 それでも根元部分からやせやすいです。 本州産のものは、上限で26℃前後にした方が良いようです。 |
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オウギウミヒドラ (写真のものは近海種) |
丈夫 |
普通 | ? | これはヤギではなく、見た目がヤギに似た ヒドロ虫網・ヤギモドキウミヒドラ科の生き物です。 お店で売られることはほとんどないと思います。 写真の個体は過去一度だけ、アクアマリンズさんから三重県の漁港で 廃棄物としてあがったものを、マリンスクエア用に送っていただいたもの です。棒状のポリプで、大変丈夫でしたが、半年ほどすると端の部分が 少し折れたように見えました。 |
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カリビアン・ゴルゴニア(輸入) |
丈夫 |
易しい |
中〜強 |
カリブ便で以前から入る、結構丈夫で面白いヤギです。 ポリプをかなり大きく開き、やせにくいです。 |
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スダレアカヤギ?(輸入) | 普通 |
普通 | 中〜強 | ブル〜ホワイトの色をしたヤギで、ポリプの大きさは5mmくらいで 相対的に中くらいで開きやすく、給餌は難しくありませんが、それ でもなかなか維持はしにくいです。 形状的には平面方向にだけでなく、やや立体的に枝が伸び、上方向へ 色は白〜薄いパープル、ブルーがあります。 |
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アザミヤギ? | 普通 |
普通 |
中〜強 |
一般に輸入でヤギレッドの名前で入荷するものです。 形状的には平面方向にだけ扇のように枝が伸びます。 ヤギの中では枝が太く、またポリプも開きやすいので飼育しやすい方 と思います。 |